心的外傷後ストレス障害
(PTSD; Post-traumatic stress disorder)

PTSDとは・・・

阪神大震災や地下鉄サリン事件で一般に知られるようになってきた、心的外傷後ストレス障害(しんてきがいしょうごストレスしょうがい、PTSD; Post-traumatic stress disorder)。

 PTSDのTは「Trauma, トラウマ」の頭文字で、訳語では単に「外傷」とされています。

 ここでいう外傷とは、身体的外傷ではなく精神的(心的)外傷のことで、ショッキングな出来事により、心に加えられた衝撃的な傷(心の傷)が元となり、その後に様々なストレス障害を引き起こす疾患のことを言います。

 トラウマには事故・災害時の急性のものと、虐待など繰り返し加害される慢性の心理的外傷があります。

 私たちは生きていく上で、大切な父や母を病気で亡くした、子供に先立たれた、職を失った、失恋したなど、たくさんの悲しい出来事や、恐ろしい出来事に遭遇することがあるかも知れません。

 でも、ここで言うトラウマは「通常の、平和で安定した社会生活では起こりえないとされることの体験あるいは目撃。自己の生命も同時に脅かされていると思わせる異常事態」のことです。

 しかしここ近年、外傷的体験としては、幼児期の性的・身体的虐待の被害者やレイプ被害者、学校におけるいじめなども重要な要因になっています。



どんな人がPTSDになるの?

こころの病気なんて、内向的な性格で、気の弱い人がかかると思っていませんか。

 実は逆なんです。

 普段、明るく前向きで、自立心が人一倍強く、自分の悩みや弱さをちょっとのことでは他人に見せない人が発症しやすいと言われています。

 なぜなら、自分の生死に関わるような衝撃的な体験をしても、人に頼らず何でも自分一人で解決しようとするので、自分の中で抱え込んで処理しきれなくなり、自ら自爆してしまうケースが多いのす。

 本人は、トラウマとなった体験を思い出したくないのに、心の傷となったそのときの出来事や状況にさらされると、悪夢や強烈な恐怖心となり、突然の吐き気や手がふるえるなどのフラッシュバックという形で繰り返し脳裏によみがえります。

 とても辛いことです。それゆえ、心の傷となった出来事を思い出させるもの(行動、状況、人物)をひたすら避け、睡眠傷害、過食、拒食、またはアルコールなどに依存する依存症、トラウマ体験の中の特定部分の記憶喪失(健忘)、感情の動きや時間の感覚がなくなるなどの回避的行為が現れます。

人によって症状は異なりますが、「自分が生きているという感覚がしない、人に会うのがわずらわしくなる、人前にでられない、眠れない」などの不安神経症、うつ病が起こるのが特徴です。


我々にどんな援助ができるのでしょうか?

実際何もできないのが現状です。

 本人はとても辛い体験をしたのですから、無理に聞き出そうとすることは本人を苦しめるだけです。そっと見守ってあげてください。

 本人から話し始めたらじっくり耳を傾け、不安なときは「大丈夫よ。わたしが傍にいるから・・・」と、優しく声をかけて安心させてあげてください。



    『そっとしておいて』

   どうかことばをかけないでください
   ただそっとしておいてください
   わたしのことをほんとうに思ってくれるならば
   どうかもうなんにも言わないでください
   どうか黙っていてください
   わたしのことをこころから考えてくれるならば

   いまのわたしには どんなことばも 
   どんな慰めごとも役には立たないのです
   ことばをかけられるとそれだけで心の傷が痛むんです

   ただそっとしておいてください
   ただ黙って遠くから見ていてください
   いまのわたしにはそれが一番いいんです 
   一番ありがたいんです

   どうかなんにもしないでください
   ことばをかけないでください
   ただそっとしておいてください
                  −−− 相田みつお −−−