ストローク理論

 私たちは誰でも、他の人々から存在を認められるととても嬉しいものですね。褒められたり、感謝されたり、自分の性格や仕事の出来などを高く評価されたり、その上「あなたはなんて素晴らしい人なんでしょう!」などといわれると、この上なく幸せな気持ちになるものです。

 交流分析でいうストロークとは、E・バーン氏によって提唱されたコミュニケーション理論です。
 ストロークは、撫でる、抱きしめる、ほめるなど、人との触れ合いや愛情によって得られる様々な刺激のことを指し、その人の存在や価値を認める・もしくは否定するための言動や働きかけのことをいいます。
 ストロークは、わたしたちが心身共に健やかに生きて行く上で必要不可欠なもので、臨床的にも実証されており、「心の栄養物」ともいえるものなのです。

 ストロークは肯定的ストローク(プラスストローク)と否定的ストローク(マイナスストローク)とに、大きく2つに分類されます。
*肯定的(プラス)ストローク
 温かい心の触れ合いをいい、相手に幸福感と喜びを与え、自らの存在に意味を感じさせます。心の糧に成長することができるとても必要な要素を担います。
*否定的(マイナス)ストローク
 「あなたはだめだ」というメッセージを送るもので、自分の存在や価値を認めてもらえず、不愉快で、ゆううつな気分にさせ、自信を失わせます。

 ストロークを行うことによって得られる効果は、「身体的」なものと「 精神的」なものの2つがあります。
*身体的(タッチ)ストローク
 抱く、頬ずりする、手を握る、肩をたたくなどの肌の触れ合いをいい、一般にスキンシップといわれているもの。
*精神的(認知)ストローク
 励ます、叱るなどの言葉によるものと、微笑む、うなずくなどの心理的なもの。

 また、相手の行為・行動に対して与えられるストロークを「条件付きストローク」、相手の人格や存在に対して与えられるストロークを「無条件のストローク」とに分けられます。
*条件付きの肯定的(プラス)ストローク
 母親が子どもに「いい成績をとったら○○を買ってあげるね」とか、飼い犬に「お座りをしたらご飯をあげるね」など、条件付きで愛情を示す行為。
*無条件の肯定的(プラス)ストローク
 「あなたはわたしにとってかけがえのない人だ」とか、「君の全てが好きだ」など、無条件で愛情を示す行為。
*条件付きの否定的(マイナス)ストローク
 「あなたのそういうところがイヤなの」とか、「素直じゃないから嫌いよ」など、条件付きでなおかつ否定を示す行為。
*無条件の否定的(マイナス)ストローク
 「あなたはいてもいなくても同じだ」「顔も見たくもない」など、完全拒否・拒絶を示す行為。

 母親の幼児に対して行うストロークは、子どもの成長に大きく影響を与えます。プラスのストロークを多く受けて可愛がられた子どもは、能力的に高く、性格的にも良い子になり、逆にマイナスのストロークを多く受けた子どもは、能力・性格面で劣ってしまうといいます。
 子どものときだけでなく、大人になってもプラスのストロークを欲しがるのは同じです。誰でも愛されたいし、大切にされたい、自分の存在価値を認めてもらいたいと思っています。
 私たちは人間関係を良くするために、人間的に優れた魅力的な人になろうと大変な努力と時間を費やします。しかし、もっと簡単にしかも絶大な効果を生むやり方があるのです。それがこのストロークです。
 私たちは肯定的なストロークを得るために生きているといっても過言ではないでしょう。
 否定的なストロークはなるべく控え、肯定的なストロークを与えるようにすれば、ますます相手との会話が円滑になり関係もさらに深まるはずです。
 ストロークは、人間関係において円滑なコミュニケーションをするための「魔法」ともいえます。

 あなたの心の中にプラスのストロークを沢山持っていますか?
 プラスのストロークを沢山持っていると、他人に対してもプラスのストロークを与えることができます。反対にマイナスのストロークを持っていると、他人に対してもマイナスのストロークを与えやすくなるのです。逆に自分にプラスのストロークを与えてくれる人には、プラスのストロークを与えたくなるのが人情です。
 最初に自分の方から与えるストロークがプラスかマイナスかによって、その後の人間関係が大きく変わるのです。
 あなたの傍にいる人(家族、同僚、上司、部下、友達、恋人など)に、プラスのストロークをたくさんあげてみましょう。愛する人には無条件のプラスストロークを・・・。それはあなたにかならず返ってきます。


  心が変われば行動が変わる
  行動が変われば習慣が変わる
  習慣が変われば人格が変わる
  人格が変われば運命が変わる
     − − − 心理学者・ウィリアム・ジェームズ − − −




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