私たち人類とチンパンジーは、99%遺伝子が同じで、共通の祖先から進化したと考えられています。
もっともっと遡っていけば、オランウータンやゴリラなども、同じ祖先から進化してきたようですが、途中で別の進化の道を歩むことになります。
ある説によると、同じ進化の旅を続けてきた人類とチンパンジーが枝分かれしたのは、今から約500万年ほど前のことだといいます。
その頃、人類とチンパンジーの共通の祖先は、アフリカ大陸の森林に住んでいました。
西からの風が雨雲を運び、豊かな雨量に恵まれたアフリカの森林は、大きな木が生い茂り、果物や木の芽などの食料に満ち溢れていました。
そんななかで、人類とチンパンジーの祖先は、はじめは樹上で暮らしていましたが、徐々に身体が大きく重くなり、樹の枝の上を歩くというよりは、枝にぶら下がって移動したり、一旦、地面に降りてから別の樹に移ることも多くなったといいます。
実は、こんなふうに両手で枝にぶら下がり、脊椎を真っ直ぐにしたり、何度も樹によじ登ることが、二本足で歩くための準備になっていたのです。
ですから、この時点までは、チンパンジーにも、人類のように二本足で歩くようになる潜在能力があったし、現在も備えているのかも知れません。
では、人類がチンパンジーから別れて、二本足で歩くようになったり、道具を使うようになったり、知性を発達させるようになたのは、どうしてでしょうか。
今から、500万年ほど前、急激な地殻変動により、アフリカ大陸の真ん中が隆起し、南北に走る巨大な山脈が生まれました。
その結果、アフリカ大陸は東西に分断されてしまうことになります。
西側には、今までどおりに風が吹き、森林もそのままでしたが、山脈に風を遮られた東側では、雨量が減り、豊かな森林もだんだんと姿を消していくようになったのです。
西側にいた人類とチンパンジーの共通の祖先は、それまでと同じように、豊かな食料と、身を隠すための樹に恵まれた生活を続けることになります。
そして、そのままチンパンジーに進化したのです。
ところが、たまたま山脈の東側にいたものたちには、過酷な生活が待っていました。
森林は徐々に樹が枯れてゆき、後には、草原が広がっていきます。
わずかに残る樹に登り、食べ物を取りつくしてしまえば、別の樹を見つけるために、身を隠す場所もなく、枝を渡ることもできない草原を移動しなければなりません。
そのとき、私たち人類の先祖は、背筋を伸ばし、二本の足で歩きはじめたのでしょう。
それは、祖先が人類になるための第一歩だったのです。
また、森林と違って、草原では、常に肉食の猛獣に遭遇する危険と隣り合わせですし、いつも食べ物をみつけられるとは限りません。
身を守り、生き残るためには、道具を使ったり、仲間と意思を通じ合わせて共同作業をする必要も生まれてきたのです。
そんなことから、脳も発達し、手先も器用になるように骨格や筋肉が発達していきました。
...苦しい環境があったから、身を守るためには必死にならなければならなかったから、私たちは、もっと強く、もっと賢く、もっと豊かになろうとし続けてきたのですね。
ともに喜び合う仲間がいたから、笑ったり楽しんだりできるようになったのですね。
その道が、いつも正しかったかどうかは別として、これからも、人類は進化し続けていくでしょう。
苦しいことがあるたびに、辛いことがあるたびに、そして、楽しいことがあるたびに。それを糧にできる強さを持っているのですから。
そして...
もちろん、あなたにだって、その強さの遺伝子が備わっているのですよ。