詳しいことは忘れてしまったのですが、その昔、アフリカの原生林に住む、ある部族は、何か大事なことを決めたり、判断に迷ったりしたときなどには、湖に映る森の姿を見て決断していた、ということを聞いたことがあります。

その森が悲しげなふうに映っていれば、悲しい結果になるだろうと判断するし、力強かったり喜びに満ちているように感じれば、きっとそんな結果になるだろうと、迷うことなくそれを実行することができるというのです。

これは実際には、そのときの自分の深層心理が、湖に映る森の姿に反映されているように思えます。

頭では、いいと思っていても、どこかでそれはよくないのではと思う心、たとえ困難な道であることはわかっていても、どうしても心がうずいて進んでいきたい気持ちを感じていたり...
 
そんな自分の意識を超えたものが、森の姿に映し出されていたのではないでしょうか。

心理学者のユングによると、人間の最も深い意識の層には、集合無意識という帯域があり、そこには時間・空間を超えてさまざまな想念が、この世の存在すべてに共通するものとしてあるということです。

そんな深いところから来るメッセージを、湖に映る森は、目に見える形として、教えてくれているのかも知れません。

そう、私たちの本質は、いつもそんな深い意識からのメッセージを受け取っていて、いつも自己の成長にとっていちばん意味のある選択を知っているのでしょう。

直感や抑えきれない心のうずき、あるいは胸騒ぎや不吉な夢などという形として...
 
ただ、意識やエゴなどが、それをあるがままに聞くことを妨げていて、問題や悩みなどを引き起こしているのではないでしょうか。

自分の直感ではなく、世間の価値基準や思い込みで判断して、結局、望む結果を得られなかったという経験は、誰にもあるでしょう。
 
ただし、それが意識的であろうと無意識であろうと、今自分に起きていることは、すべてが自分が選択し同意していることだということは確かなようですね。

どんなことでも、過去に自分が「する」あるいは「しない」ということを決めたからこそ、それが今目の前に起こっているのです。深い部分からのメッセージで選択したものは、すぐにはそれとわからないこともあるかも知れませんが...

もちろん、「それしか選択肢がなかった」とか「まわりの状況に巻き込まれてしまったから」などとしか思えないこともあるでしょう。

でも、それさえも、どこかで自分が選択または同意していたと考えられるでしょう。

『過去に自分がしてきた選択が、今の自分を創ったのです』

また、「自分とは自分が考えているものである」ということも言えるようです。

自分は内気だと思っていると、それを証明する事実ばかりを探してしまいますし、自分は積極的だと思うと、やはりその証拠が目につきます。
結果として、自分が思っている自分のイメージ通りに振る舞うことになり、その証拠はますます増えるということになるのです。

『今の自分は、過去に自分が考えてきた自分の姿なのです』

残念ながら、現在の自分に充分満足できなかったり、どうしても自分のことが好きになれないという人もいるでしょう。
 
でもね。

今の自分を受け入れることができない、ということは、自分の過去にこだわったり、過去を否定することになってしまいますね。

こだわったり否定すると、それはますます大きくなっていきます。
そして、その思いが未来に反映されていくでしょう。

それよりも、もっと大切なのは、未来のことに目を向けてみることなのではないでしょうか。
過去の選択と考えが、今の自分を創り上げたように、今の選択と考えによって、未来は、自分の望むようにいくらでも創りだすことができるのですから。

こんなふうに意識を変えてみましょう。

今まで私たちがしてきた選択や考えは、そのときはそれが最良だったのです。
 
過去は、すべてがOK。
だって、うまくいくことやうまくいかないこと、いろいろなことを学ぶことができたのですから。
 
だから、今、より大きな自分がいて、望む未来を創りだそうとしているのですよね。

『過去はすべてOK、今の自分もすべてOK』

そう思えた瞬間は、とても幸せな気分になれます。
そして、未来に向かっての、ポジティブで大きな可能性を見ることができるのです。

もっともっと自分を好きになりましょう。
すばらしい今と未来を、創りだすための大切な相棒なのですから。