どんなことにも、決断を下すのが苦手な人がいます。
たとえば、何かをやろうとするのに、ふたつの選択があって迷っているとします。
ひとつを選ぶことで何かを失うことを恐れている場合もあるでしょう。
会社を辞めて自分の好きなことをしたいけれど、食べていけるかどうかわからない。
といって、このまま会社にいても、先が見えているような気がする。
また、どちらも魅力があって迷ってしまうときもあります。
あれも自分がしたいことだし、これも前からやってみたいと思っていたことだ。
でも時間がなくて、どちらかひとつしかはじめることができない。
そんなふうに、なかなか決めることができないのです。
物事を決めるのが苦手な人は、それなりの理由があるのでしょう。
子どもの頃に、自分が決めたことを、まわりの人から否定されることが多くて、いつしか自分には何かを決める能力はないと決めてしまった人もいるかも知れません。
自分で選ぶよりも、誰かに決めてもらった方が安全だと思い込んでいるのです。
ところが誰か他の人に何かを決めてもらうということほど、意味のないことはありません。
だって、どんなに親密な人でも、他の人には、自分が本当は何を望んでいるのかがわかるはずはないのです。
または、以前に自分が下した決断で大きな失敗をしてしまって、それ以来、また同じことが起こるのを恐れて、無意識に何かを決めることを先延ばしにしたり、避けているという場合もあるでしょう。
これも、ちょっと問題でしょう。
決断をしなかったり先延ばしにするというのは、そこから逃げ出すということを決めるということになるのですし、たいていの場合その決断は、あまりいい結果には結びつかないようです。
そんな人によく効くおまじないがあります。
それは、
「何でもいいから、決めてみよう」
と心のなかで自分に言ってみることです。
実は、人が何かに迷ってしまうというのは、どちらでもいいと思っているからという場合が多いようなのです。
絶対に食べていけないということがわかっているのなら、会社を辞めようかどうか迷うこともないはずです。
また、会社がイヤでイヤでたまらなくて、好きなことがしたいと思っているのなら、迷うこともありませんよね。
うまくいけば、それで生活していけるかも知れないし、いざとなれば他のことをしてでも食べてはいけるだろうと思う、とはいえ会社にいれば安定しているだろうし仕事にもどこかで楽しさも感じている。だから迷ってしまうのです。
したいことがいくつかある場合だって、同じくらいやりたいと感じているから迷うのですよね。
そのうちのひとつが、自分にとって最も大切だとわかるのなら、迷う前にそれをはじめているでしょう。
どうしようかどうか決めかねていると、エネルギーも身動きが取れずに滞ってしまいます。
そんな状態でいれば、どちらかをはじめることになっても、別の方にしておけばよかったと、後悔が残ることになるでしょう。
いつまで迷っていても、最良の選択ができるわけではないのです。
でも、とにかく「自分で」決めてみれば、エネルギーが動き出し、何かがはじまって行くようです。
そして、いちばん大事なのは、自分の決めたことを尊重するということなのではないでしょうか。
もともとどちらを選んでもいいと感じていたのですから、とにかく選んだ方に、もう迷うことなく全力投球していきましょう。
どんな小さなことにも、そんなふうに決断をしていくと、不安も消えていき、やがて自分の決断する能力に気づいて行くでしょう。
その能力とは本当は、どちらを選んだとしても、それを最良の選択にしてい
くことができるという力なのです。