19世紀のオーストラリアに、アレクサンダーという舞台俳優がいました。

彼は、一人芝居や演説によって生計を立てていましたが、突然、舞台に上がると、声が出なくなる病にかかってしまったのです。

あわてて、いろいろな医者にかかりましたが、状況は芳しくありません。
医者は、「できるだけ声を出さないように」とか、さまざまなアドバイスをしてくれましたが、一向に効果は見られないのです。

とうとう彼は、その仕事を辞めざるを得なくなってしまいました。
 
アレクサンダーは、医者に頼らず、自分で自分を治そうと、身体について一生懸命に勉強しましたが、なかなか原因を究明するところまではいきません。

発生練習や声帯の強化など、考えられることはすべてやってみましたが、やっぱり舞台に上がると、声がでないのです。
 
そんなある日、彼は、何とか演説ができないかと、鏡に向かって話しはじめようとしました。

そして、鏡に写る自分の身体の動きを観察しているうちに、あることに気づいたのです。

しゃべろろうとして口を開くと、同時に首の筋肉が張り出し、姿勢がゆがんでしまいます。
何度やっても、同じようになります。

試しに彼は、意識的に、首や背中の筋肉をリラックスさせ、姿勢を変えてみました。

...すると、思ったとおりに声が出たのです。

つまり、舞台に上がったときの、ちょっとした姿勢や身体の使い方が、声を出にくくしていたのですね。
それをほんの少し変えてみるだけで、大きな変化が見られたということです。

彼は、この発見は、多くの人の役に立つはずだと考え、正しい身体の使い方などの指導をはじめました。
 
それが、世界中に広がっているボディワーク、「アレクサンダー・テクニック」のはじまりです。

身体だけではなくて、人生の問題のほとんども、ちょっとした習慣や考え方のクセなどが、本当の原因になっているということが多いようです。

・何度も、同じような問題で苦しんでいる。
・うまくいきそうになると、怖くなって前に進めなくなってしまう。
・せっかくのチャンスを、いつも見逃してしまう。
・好きな人に、つい嫌味を言って、自分から離れていくように仕向けてしまう。
・つい自分から、責任を背負ってしまってつらい思いをしている。

ほかにもいろいろあるでしょうが、何度も同じような問題を抱えてしまうということは、いつも同じように物事を受け取ったり、同じような考え方をしているのかも知れません。
 
ジュークボックスに、いつも同じリクエストをしていれば、いつも同じ曲がかかるのです。

もちろん、そんな考え方や受け取り方は、はじめはあなたを守るために役に立っていたのでしょう。

危険を冒さないようにとか、人と違うことをして恥ずかしい目に会わないようにとか、傷つかないように、その人が本当に自分を受け入れてくれるかテストしてみたりとか...

でも、同じ曲に飽きたら、いつもとは違った曲をリクエストしてもいいのですよ。

アレキサンダー氏のように、少し自分のことを観察する機会を持ってもいいかも知れません。
 
どんなときに、問題を抱えてしまうのか、そのとき自分はどんな考え方をしているか...

問題を感じるとき、たいていは、そのときに、「私は〜しなければならない」と思っているようです。

でも、それは、本当に、そうしなければならないのでしょうか。
 

今日は、そんな思いを、ひとつだけでいいから手放してみましょうよ。
たったそれだけのことですが、どんな大きな違いが生まれるか楽しみにしていてください。

そして、どんないいものが、手元にやってくるのか...
ワクワクしてきますよね。