もう30年以上も前、子どもの頃に読んだお話で、未だに心に残っているものがあります。
小学生向けの雑誌に載っていたと記憶しているのですが、作者も題名も覚えていませんし、細部もかなり曖昧で、元の話とは違ってしまっているかも知れませんが、ご紹介させていただきますね。
ある学校に、運動が苦手な男の子がいました。
男の子は、一度でいいから運動会のかけっこで1位になりたいと思っていますが、とても早く走ることなどできそうもありません。
そんなときに、山をひとつ越えたところにある村に、魔法使いが住んでいる
ことを知り、相談に行ってみることにしたのです。
「かけっこで1位になりたいって?だったら、とても早く走れるようになるクスリを作ってあげようか」
魔法使いはニヤリと笑いましたが、クスリをあげるのには、ひとつ条件があると言うのです。
条件とは、朝6時に家を出て、7時までに魔法使いの家にこなければならないというものです。
男の子は、早速次の日の朝6時ピッタリに勇んで家を飛び出しましたが、魔法使いのところまで行くには、大きな山を越えなくてはならないのです。
息を切らせてたどり着いたときには、もうとっくに7時を過ぎてしまっていました。
次の日も、男の子は、6時に家を出ますが、7時までに魔法使いの家に着くことはできません。
その次の日も、そのまた次の日も、男の子は山を越えて行きます。
魔法使いの家に到着する時間は、少しずつ早くなっていきましたが、どうしても7時には間に合いません。
何度も挫けそうになりながらも、男の子は、運動会の前の日になって、とうとう7時に魔法使いの家に着いたのです。
男の子は、魔法使いから、早く走れるようになるクスリを受け取り、かけっこで1位になることができたのでした。
...ところが、後で魔法使いが言うことには、そのクスリはただの水だったということです。
いかに魔法使いでも、早く走れるクスリなんて作れるわけがない。
男の子が、毎日毎日、山を越えて足腰を鍛え続けたから、いつの間にか早く走れるようになった。
ただの水を、早く走れるクスリに変えたのは、男の子の努力や、挫けない心だと祝福したのでした。
このお話が、どうして私の印象に残っているかというと、人生も、まったく同じことではないかと気づいたことがあったからです。
幸せになりたい
夢を叶えたい
成功したい
そんな望みを持つとき、人は、往々にして、どこかに望みが叶うクスリはないかな、などと思ってしまいがちです。
だけど、もしも、そんなクスリを手に入れることができたとしても、何もしないでいては、それはただの水にしか過ぎないでしょう。
自分の足で前に進んで、失敗したり、障害物に出会って挫けそうになったりすること。
それでも、自分を信じて、とにかく一歩でも前に足を出し続けること。
どんなことからでも、何かを学ぼうという気持ちを持つこと。
それがあってはじめて、ただの水が、夢を叶えるクスリになるのです。
これはすばらしい魔法ですね。
今、苦しいこと、辛いこと。
心が落ち込むこと、自分の力を疑ってしまいそうになること。
そんなことがあるたび、この魔法がかけられていくのです。
そして、あなたも、いつでもこの魔法を使うことができるのですよ。
人はみんな、成功するために生まれてきたのですから。